メールマガジン登録 menu

Topics お役立ち情報

国土交通省より「不動産特定共同事業の利活用促進ハンドブック(令和6年7月)」発表

不動産特定共同事業の利活用促進ハンドブック

みなさん、不動産小口化商品の注目度が高まっておりますが、「不動産特定共同事業法」という法律はご存じでしょうか?

実は、不動産小口化商品の根拠法が不動産特定共同事業法となりまして、この法律を所管する官庁が国土交通省となります。そして、国土交通省から定期的に不動産特定共同事業法に関わるハンドブックが発表されており、先日「不動産特定共同事業の利活用促進ハンドブック」が発表されました。
私が読む限り、不動産特定共同事業を活用した事業を推進する事業者サイド向けのハンドブックと判断しますが、投資家サイドにも興味深い情報が多いため、ポイントをお伝えしたいと思います。

まず、「不動産特定共同事業の制度の概要・実績」のパートについて。不動産特定共同事業者は第1号事業者から第4号事業者まで存在しているのですが、それぞれの事業者が行う業務をスキーム図で説明しております。
不動産小口化商品の投資を検討する際に、事業者がどのようなライセンスを保有し、どのような立場になるか、4つの事業者区分がある点を理解しておくと良いと考えます。 また「不動産特定共同事業の事例」として、『CREAL白銀高輪(クリアル株式会社)』と『ADVANTAGE CLUB銀座一丁目任意組合(株式会社青山財産ネットワークス)』の2事例が掲載されております。前者は匿名組合型の事例として、後者は任意組合型の事例として取り挙げられております。

この「匿名組合型」と「任意組合型」の表現、耳慣れない方も多いのではないでしょうか。
メディアで取り上げられる際には、「匿名組合型」は「不動産クラウドファンディング」として、「任意組合型」は「不動産小口化商品」として呼ばれることが多いですね。主な特徴の違いとして、投資期間の違いがございます。一般的に「匿名組合型」が短期間であり、「任意組合型」が中長期間となります。なお、今回掲載された事例の場合、『CREAL白銀高輪(クリアル株式会社)』は運用期間1年、『ADVANTAGE CLUB銀座一丁目任意組合(株式会社青山財産ネットワークス)』は運用期間8年の事例となっております。また、税制上の取り扱いが異なる点も要注意です。配当に対する税務上の取り扱いは、「匿名組合型」は雑所得として、「任意組合型」は不動産所得となります。

不動産特定共同事業の利活用促進ハンドブックについて

さて戻りまして、このパートにおいて、令和5年における組成実績が発表されております。令和5年における新規案件数は701件と対昨年比で+161件(+29.8%)と大幅な増加となっております。主な要因は、不動産クラウドファンディングの新規案件が増加したことによります。令和5年の新規組成は530件、1007億円の組成となり、令和4年がそれぞれ419件、604億円であることから大幅な増加であることが確認できます。こういった影響もあり、不動産特定共同事業の新規出資額も令和5年は3086億円となり、過去最高であった令和4年の2715億円を上回ることになりました。市場の拡大が確認できます。

また国土交通省は不動産特定共同事業の地域(地方)における活用メリットも訴求しております。こちらも事業者サイド視点での表現となっておりますが、メリットとして、「不動産開発・改修に係る資金調達難への対応」、「まちづくりの自分事化・関係人口の増加」、「行政費用の抑制」を挙げております。地方の不動産開発や不動産流動化案件において、都心部と異なり投資マネーが相対的に少ないなかで、不動産特定共同事業を活用したスキーム、具体的には不動産クラウドファンディングなど通じて、資金調達を促進できる点をメリットに挙げていると読み取れます。加えて、投資家サイドも、地方創生に関わる活性化に資する案件も多いことから、共感して投資することも期待できると考えられます。こういった背景もあり、地方における新規案件は205件(全体に占める比率は29.2%)となり、令和4年の実績(129件/23.9%)を大きく上回る結果となりました

不動産特定共同事業の地域(地方)における活用メリットについて

このほか、「不動産特定共同事業の利活用促進ハンドブック(令和6年7月)」には、「不動産特定共同事業の好事例」として7件の実例が掲載されております。不動産特定共同事業を具体的に知るうえで大変参考になります。さらに、「税制特例」や「参考資料」も掲載されており、不動産特定共同事業を把握するうえで大変参考になります。皆さまも是非ともご注目ください。

引用:国土交通省「不動産特定共同事業の利活用促進ハンドブック」
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001519666.pdf

著者 profile

日俣 賢太郎

不動産鑑定士
東急不動産ホールディングス株式会社

【その他コラム】
不動産投資に対する不安感にどう対処する!?
日俣 賢太郎