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都心立地の象徴的な物件を少額で投資するという選択肢
2024年度上半期を振り返り、不動産小口化商品マーケットにおけるトピックスとして、「都心立地の象徴的な物件」が相次いで小口化商品として販売開始になったことをご紹介したいと思います。
まずは、足元の不動産小口化商品の市場規模をみてみましょう。国土交通省が発表した令和5年度「不動産証券化の実態調査」の結果によると、令和5年度にリート及び不動産特定共同事業の対象として取得された不動産又は信託受益権の資産額は約2.7兆円でございました。取得された資産をスキーム別にみると、リートが約2.3兆円。不動産特定共同事業が約0.4兆円といった内訳となります。この不動産特定共同事業が小口化商品となります。この他にも、信託を活用した不動産小口化商品も供給されているため、さらに市場は拡大しております。
次に、不動産投資マーケット全体に都心立地の象徴的な物件の取引をご紹介します。リートにおける高額物件取引を確認しますと、高額ランキングは以下の通りとなります。
1位新宿三井ビルディング(1,700億円)、2位飯田橋グラン・ブルーム(1,389億円)、3位六本木ヒルズ森タワー(1,154億円)です。いずれも1,000億円を超す高額物件となります。
皆さまご存じの通り、小口化商品の大きな特徴として、少額から不動産投資を実行できる点があります。まさに、リートにおける高額物件の第3位にランクインする六本木ヒルズ森タワーにおける建物内の別フロアを対象として、2024年度上半期にリートとは別事業者にて小口化商品化されており、1口1,000万円から販売開始しております。投資対象部分が異なるため、単純比較はできないですが、約1/10,000の投資金額で、六本木ヒルズ森タワーに不動産投資を実行できるともいえます。
さらに、2024年度上半期には、六本木ヒルズ森タワーのほかに、GINZA SIXの一部フロア(オフィスフロア)を信託し、信託受益権を投資家に譲渡するスキームとなる不動産小口化商品が販売開始となりました。GINZA SIXは2017年に松坂屋銀座店の再開発プロジェクトとして開業した大型複合施設となります。言うまでもなく、銀座エリアは、高級ブランドや高級飲食店が立ち並ぶ日本を代表する商業エリアであり、GINZA SIXは、銀座の中心部となる中央通りに位置するランドマーク施設といえます。このGINZA SIXの一部を対象とした小口化商品が、2つの事業者から販売開始となっております。再開発プロジェクトであるため、複数の権利者が存在しており、今回は別々の権利者が保有する不動産を対象として小口化商品化が実現したのです。
まとめますと、2024年度上期に、リート市場を例にとっても大型不動産の水準に位置する「六本木ヒルズ森タワー」や、日本を代表する商業エリアに位置する「GINZA SIX」といった都心の象徴的な不動産が相次いで小口化商品として販売開始したのです。
なぜ、このような都心の象徴的な不動産を対象とした小口化商品の販売が相次いだのでしょうか。少し考察してみますと、小口化商品に対する需要拡大が背景にあると考えています。国土交通省が発表した「不動産特定共同事業の利活用促進ハンドブック」の令和6年7月リリース版によると、令和5年の新規出資額は、昨年比で約300億円増加し、不動産特定共同事業の法施行後初となる3,000億円を突破しました(前述の通り、物件取得規模は約4,000億円となります。SPCを活用した取得の際にローンを活用するなど、資金調達手法で出資以外の調達が含まれているためと推測しております)。こうした不動産小口化商品市場の拡大踏まえ、多額の販売総額となる傾向にある都心物件も小口化商品対象になってきているものと推察します。
また、小口化商品は不動産投資のエントリーモデルとしての側面もございます。それは、物件の運用をプロの不動産事業者が担うため、投資期間中の管理運営を要さない点が作用しております。こうしたエントリーモデルの側面から、投資家としても、誰もが知っているエリアに立地する大型不動産への投資を選好する傾向がみられます。都心立地の象徴的な物件の場合には、供給が限定的であることから、売買市場において需給がひっ迫する傾向にあり、小口化商品の運用期間満了時の出口戦略においても、投資戦略どおりの売却活動の高い蓋然性が期待できるといえます。
つまり、不動産投資のエントリーモデルとして、都心の象徴的な不動産を対象とする小口化商品はニーズにマッチしているといえるのです、とはいえ、自ずと高額物件になることから、従来は小口化商品事業者が販売リスクを警戒する面がございましたが、小口化市場の拡大を背景として、複数の該当する商品が販売開始に至ったといえると考えます。
加えて、小口化商品の場合には、ローンによるレバレッジがかかっていない現物不動産を原資産としており、ローン調達やレバレッジに対するリスクもかかっていない特性もございます。まさに、不動産そのものに対して、少額から投資できる点に、わかりやすさも具備しているといえると考えます。
2024年度上期に都心の象徴的な不動産を対象とした小口化商品の販売開始をみて、投資家サイドの更なる需要顕在化が見込まれ、市場拡大に期待がかかります。
今後も不動産小口化商品の供給トレンドをウォッチして、コラムでお届けして参ります。
参照元:
令和5年度 「不動産証券化の実態調査」の結果
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/content/001751761.pdf
国土交通省「不動産特定共同事業の利活用促進ハンドブック」
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001519666.pdf